hroko's はてな diary

ゆるふわ気ままな日記です。はてなダイアリーからのインポートを引き継ぎます。

読書メーターのまとめ 2013年分

2013年の読書メーター
読んだ本の数:104冊
読んだページ数:34938ページ
ナイス数:239ナイス

昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)感想
この作者の短編は、「小石はどこから」や「行間からはみだすものをものを読め」のようなお気楽な作品が好きです。これらが収録されているので、購入しました。横山えいじ氏のカバーも良い感じです。この短編集には、表題作のような比較的気楽なテーマのものから難しいテーマのものまでがまとめられていて、一冊で、さまざまなSFを楽しめます。難しいテーマの作品「そして、わが名は」は難し過ぎな感じでした。
読了日:1月5日 著者:R.A.ラファティ
ヤマネコ号の冒険 (アーサー・ランサム全集 (3))ヤマネコ号の冒険 (アーサー・ランサム全集 (3))感想
ツバメ号とアマゾン号」シリーズ全体の位置付けは、第2巻『ツバメの谷』の言及から明らかですが、この作品単独でも、充分に楽しめる構成になっていると思います。ローストフト港からイギリス海峡の間を帆船で航海する辺りの描写は、真に迫るものと思いますし、無人島でのキャンプシーン等は、真に迫る物を感じます。こういうアウトドア体験を味わえる「ツバメ号とアマゾン号」シリーズの中でも、特に素晴らしい作品だと思います。
読了日:1月5日 著者:アーサー・ランサム
宇宙嵐のかなた (ハヤカワ文庫SF)宇宙嵐のかなた (ハヤカワ文庫SF)感想
巨大な宇宙戦艦で銀河の「海図」を作成中に、帝国に属さない惑星連邦を発見し、砲艦外交を開始、というストーリーです。「宇宙嵐」ほかのSF設定や問題を「心理学的」なものとするあたりには、レトロな雰囲気を楽しめます。1952年の作品。なので、砲艦外交の結末や、あくまでも「法」による決定を重視する地球帝国とその政治体制などは、当時の時代背景を考えてしまいますが、宇宙戦艦での冒険、敵対国の軍人とのロマンスなど、スペースオペラの魅力をタップリと楽しめます。
読了日:1月6日 著者:アルフレッド・エルトンヴァン・ヴォクト
サイモン・アークの事件簿IV (創元推理文庫)サイモン・アークの事件簿IV (創元推理文庫)感想
神秘的・オカルトな雰囲気の事件が極めて現実的に説明され、解決されるシリーズの特徴は維持されていますが、訳者編の短編集ということで、日本向けのケレン味があるような感じのタイトルが多いです。また、語り手の「私」も歳をとり、時の流れを感じる作品もあります。時の流れのなかで、「私」とサイモン・アークの関係が少しずつ変わりながらも、友情を維持しているのが、少し羨ましい探偵とその記録者スタイルの探偵小説です。
読了日:1月8日 著者:エドワード・D・ホック
オリュンポス 1 (ハヤカワ文庫SF シ 12-12)オリュンポス 1 (ハヤカワ文庫SF シ 12-12)感想
とりあえず、『イリアム』の続きはどうなったの、という疑問を解消してくれます。そして、物語は新たな展開へ、という構成ですが、文庫版全3巻の1巻目ですので、この本だけでは、感想はなんとも... アキレウスと導師たるノーマン(オヂュッセウス)の危機で、今後の展開に期待させられる導入部分になっています。巻末の「訳者あとがき」と「注解(訳者補足)」は、参考になりますが、こういう蘊蓄なしでも、「物語」は楽しめます。
読了日:1月13日 著者:ダン・シモンズ
オリュンポス 2 (ハヤカワ文庫SF シ 12-13)オリュンポス 2 (ハヤカワ文庫SF シ 12-13)感想
第一部の『イリアム』の醍醐味でもあった、SFならではの光景、本巻では、エッフェル塔をプラットフォームにしたゴンドラで、地球を旅する、そんなSFでしか思いつけないようアイデアと光景のもと、物語は、「人間」として知識を得て理解すること、命をかけて戦うことの意味などを考えさせる場面が描写されます。続きが気になる第2巻です。
読了日:1月13日 著者:ダン・シモンズ
オリュンポス 3 (ハヤカワ文庫 SF シ)オリュンポス 3 (ハヤカワ文庫 SF シ)感想
これだけの仕掛け、世界を造りだして、作者は何を言いたかったのだろう、そういう疑問には、巻末の「訳者あとがき」が簡潔にまとめていますが、文学の引用やギリシャ神話の知識を無視しても、「物語」を楽しめるようになっているところが、すごいな、と思います。また、SFファンなら楽しめる、SFな光景やガジェットを多数登場させていて、最後まで、一気に読ませる作品だと思います。文庫版、全3巻で目眩がするような刺激を楽しめました。もっと勉強したい、そんな読後感があります...
読了日:1月13日 著者:ダン・シモンズ
曾根崎比丘尼 - 新・雨月物語 (C・novels)曾根崎比丘尼 - 新・雨月物語 (C・novels)感想
人の業こそが「あやかし」、でそれを十手持ちに協力するという立場でまとめた、『雨月物語』の作者、青年時代の上田秋成が主人公な、伝奇風連作短編です。ノベルスとしての仕掛けは、本冊だけでは活かし切れていませんが、次巻に期待できるようになっています。作者あとがきの解説は上田秋成の参考書として活用できます。気楽で暇つぶしな読書としては、悪くないです。
読了日:1月27日 著者:富樫倫太郎
天満ばけもの巡り―新・雨月物語 (C・NOVELS)天満ばけもの巡り―新・雨月物語 (C・NOVELS)感想
短編風な章立てですが、前巻の最終話からの続きな長編になっています。雨月物語っぽい伝奇的な内容ですが、前巻の仕掛けを活かしきれていないとか、メインとなる妖の「笑い猫」とその対策も、前巻とは趣が違っていて、続巻としては、残念でした。本作だけなら、日曜日に、適当な映画を観た、って言う程度には満足できます。でも、ええと、それだけ、かも。雨月物語を期待すると、ハズレだと思います。
読了日:1月27日 著者:富樫倫太郎
哲学者クロサキのMS‐DOSは思考の道具だ哲学者クロサキのMS‐DOSは思考の道具だ感想
MS-DOS時代にPCでの文書作成から出発して、ハードディスクに保存した文書の検索、CD-ROMで提供される電子テキストの検索、ネットワーク上の文書や情報の扱いに発展しながら、「電子化されたテキスト」の扱いについて論述しています。もとがパソコン雑誌の連載なので、読みやすのですが、内容が充実していて、まさに「温故知新」です。インターネットの普及、Web2.0、そんな発展があっても、本質的な問題は1990年代から変わっていない、ということを理解できたような、ともかく、もう一度、読み返したい、そんな内容です。
読了日:2月3日 著者:黒崎政男
火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)感想
作者が設定した「火星」を舞台にした短編を時代順にまとめて年代記風にした短編集です。テラフォーミングなしで居住可能な火星に、アメリカ合衆国からだけ移民してくる等の結果、戦後的、冷戦的な米国的価値観での物語が多いです。また、巻末の解説によると、本冊では、2030年に年代が変更されているそうですが、この短編集に年代は関係なく、米国的価値観での異文化との接触、移民の葛藤、帰れない土地への望郷など、古くならない物語、または、「スペースオペラ」な物語を楽しめます。
読了日:2月9日 著者:レイブラッドベリ
女海賊の島 (アーサー・ランサム全集 (10))女海賊の島 (アーサー・ランサム全集 (10))感想
中国の海賊の一人娘が英国に留学していたある日、海賊の首領である父親の跡を継ため、呼び戻され、しかし一人娘は、古典ラテン語の研究に未練を残しながらも、海賊の首領として生活する日々の中で、船舶火災にあったSwallowsとAmazons のメンバーに出会って... やりたいこと、しなければならないこと、そんな葛藤に悩む女性の姿が描かれている、本シリーズのメタフェイクションの2作目です。中国沿岸の習慣については、疑問を感じるところもありますが、ストーリーの組み立て、伏線などの工夫が楽しめます。
読了日:2月9日 著者:アーサー・ランサム
自転車で痩せた人 (生活人新書)自転車で痩せた人 (生活人新書)感想
50代になって、健康に不安を感じた著者が、ロードバイクで走ることで健康を回復して、自転車で走ることを楽しめるようになっていく物語...ダイエット本ではなくて、ロードバイクやスポーツ自転車で走ることを楽しむための知識と情報をまとめた本です。こういう本を読むと、自転車で走りたくなるので、寒さや花粉症が辛い季節には、繰り返し読みたいです。ただし、2006年に出版されていて、自転車に関する社会的な環境は変わっているので、最新情報をチェックする必要はあります。
読了日:2月17日 著者:高千穂遙
未完少女ラヴクラフト (スマッシュ文庫)未完少女ラヴクラフト (スマッシュ文庫)感想
クトゥルフ神話ネタのライトノベルの体裁ですが、ストーリーは、古き良きスペースオペラなものです。クトゥルフ神話ネタのところに註がついていたりするのも、スペオペで科学用語に作者の註が付くことを意識したかのようです。スペースオペラと認識すると、このお話はとても良くできています。不本意異世界に迷い込んだ主人公が、(実は女王様だった的な)美少女と巡り会い、冒険の末にヒーローや王になる、そういう典型的な展開を楽しめます。休日の午後の読書を楽しめます。
読了日:3月23日 著者:黒史郎
遮断地区 (創元推理文庫)遮断地区 (創元推理文庫)感想
2001年の英国、スラム的な住宅地が舞台の暴動と、巻き込まれた地区担当の保険師等のストーリーと弁護士と事業家の事件が、「小児性愛者」をキーワードに紐づけられつつ、行方不明の少女の捜索と暴動に巻き込まれた地区担当者の危機がスリリングに描かれています。小児性愛者に対する社会的な反応については、日本とイギリスの差異を感じますし、貧困層や虐待、小児性愛者に関する問題等の解決策などが提示されることもないのですが、事件の展開と警察の捜査状況の緊張感ある描写を楽しめます。
読了日:3月24日 著者:ミネット・ウォルターズ
小説ルパン三世 (FUTABA・NOVELS)小説ルパン三世 (FUTABA・NOVELS)感想
ルパン三世は、TVアニメシリーズ、年一回のスペシャル放送や劇場版のほうが馴染みがあるので、おそらく、オリジナルの原作コミックよりなこの小説版は、新鮮で興味深く楽しめました。ハードボイルド風なものから冒険・伝奇的なものまでそろったアンソロジーなので、TVシリーズのような気分で、原作風のルパン三世を楽しめたと思います。
読了日:4月7日 著者:大沢在昌他
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)感想
冒頭で著者の論点がまとめられています。本書は、冒頭で示した考え方で、さまざまな文明や社会がどのようにして滅んでしまったのか、または、どうして持続しているのかを、具体例を示して説明しています。例えば、第2章のイースタ島がかつて、モアイ像を作成していた時代には森林があって、人口も多かったけれども、現在、こういう状況になっていて、その理由は、という説得力のある説明をしています。読みやすく、好奇心を満たしてくれる本です。
読了日:4月21日 著者:ジャレド・ダイアモンド
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression─圧縮 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル The 1st Compression─圧縮 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)感想
不幸な家庭環境から少女娼婦として「死んだほうがいい」という諦観を持って生きていながら、娼婦という立場から犯罪に巻き込まれて殺されそうになった少女が、「なんで私なの」という疑問に戸惑いながら、自分の生き方を模索していくお話。少女を助けた捜査官も、それぞれの動機を持ちながら少女と犯罪と関わっていくドラマを、道具としての有用性を証明しなければならないのに、濫用されることを拒否したり、軍事目的の人体強化によって心理的・性格的に社会的な問題を抱えてしまった人物など、高度な技術やSF的なガジェットで盛り上げています。
読了日:4月21日 著者:冲方丁
文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)感想
上巻の冒頭で示された著者の考え方で、さまざまな文明や社会がどのようにして滅んでしまったのか、または、どうして持続しているのかを、具体例を示して説明しています。下巻では、鎖国していた江戸時代の日本や、現代のルワンダの状況、中国の環境汚染なども取り上げられていて、好奇心を刺激してくれる内容で、読書の楽しみを充分に味わえました。
読了日:4月28日 著者:ジャレドダイアモンド
マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion─燃焼 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion─燃焼 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)感想
第2巻の冒頭は前巻の戦闘シーンの続き、緊張感のある導入部分で物語に引き込まれます。その後、一時的に避難した場所でヒロインに移植された能力は禁断の軍用人体改造技術だった等の背景を明かされます。ここで「死んだほうがいい」から「生きたい」、そのために「事件を解決したい」とヒロインの動機が明確に変化していきます。ヒロインが積極的になるので、物語はポジティブな感じで展開していきます。カジノでの勝負の必要性のアイデアはとても良いと思います。そして、カジノでの賭けのスリルと駆け引きが楽しめます。
読了日:4月28日 著者:冲方丁
マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust─排気 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust─排気 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)感想
第3巻の冒頭は前巻のカジノ場面の続きです。いよいよメインのブラックジャックでの賭け、高額チップへ「アクセス」するまでが前半です。前半部分でのヒロインの自立とパートナーとの共同関係の確立を経て、後半でヒロインの「事件の解決」、パートナーとなった捜査官と犯罪に加担してた元相棒との決着が、刑事物風にSFガジェット満載で描かれています。カジノ場面の分析-情報処理-以外は、基本的に古典的なカードさばきと心理戦との対比がとても鮮やかでよい娯楽作品になっています。
読了日:4月29日 著者:冲方丁
ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫)ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫)感想
殺人事件の捜査に関与した司法関係者でない主人公の独自視点・手法による謎解きを、同行した語り手が紹介するスタイルのミステリです。冒頭の人物紹介、事件の現場、関係者の証言、状況証拠等が逐次的に描写されていきます。作者は、読者の立場を主人公を事件現場に案内した検事と同じになることを意図しているようです。なんというか、主人公や語り手に感情移入しづらい一方で、司法機関の担当者として苛立っている検事の立場になってしまいます。こういうミステリの読書経験がなかったので、新鮮な感じがする作品でした。
読了日:5月2日 著者:S・S・ヴァン・ダイン
よろずお直し業 (徳間デュアル文庫)よろずお直し業 (徳間デュアル文庫)感想
戦場で瀕死になった男が、記憶と引き換えに、「任意の対象の時間を戻す能力」を持って蘇生し、以来、毎日、自分の体を負傷する前の時間に戻すことで生き続け、この能力で様々な物を修復・復旧しながら旅をする連作短編です。センチメンタルでちょっと良い話だけなので、なんというか、ポカポカした気分になります。善意を信じてみるのも悪くない、そんなお話でした。
読了日:5月4日 著者:草上仁
私本太平記(一) (吉川英治歴史時代文庫)私本太平記(一) (吉川英治歴史時代文庫)感想
とても読みやすく、一気に読んでしまいました。おおよその展開を読者が知っている実在の人物が主人公の歴史小説ですから、作者の演出といいますか、場面の作り方、人物の台詞などを楽しむという読みかたをしました。第1巻なので、時代背景と人間関係の伏線が少しずつ書かれています。藤夜叉との出会いと別れが一つの区切りになっていて、続巻が楽しみです。
読了日:5月5日 著者:吉川英治
私本太平記(二) (吉川英治歴史時代文庫)私本太平記(二) (吉川英治歴史時代文庫)感想
正中の変から元弘の乱へ向かう時期です。道誉から高氏へはかりごと、登子との結婚と妖霊星の一件、覚一母子の上京と旅の途中の藤夜叉の関わりなどが語られながら、物語の時間はゆっくりと進みながら、戦乱の予兆を感じさせる内容でした。
読了日:5月6日 著者:吉川英治
洞窟 (ハヤカワ文庫NV)洞窟 (ハヤカワ文庫NV)感想
削り取った石を喰らいながら性交し死んでいった少年と少女の全裸遺体が、天使の壁画が刻まれた洞窟で発見されて、しかも、その壁画の下には、塗り隠された別の絵が...南イタリアの洞窟住居が伝統的な(実在の町をモデルにした)架空の町に、調査のため訪れた人類学者の主人公の一人称で、洞窟で発見された遺体の事件、現地の人々の挿話がオカルトを思わせる緊張感で語られます。それは良いのですが、オカルトでもホラーでもミステリでもなく、ちょっと半端な感じがして残念です。
読了日:5月12日 著者:ジェイムズスターツ
夜鳥 (創元推理文庫)夜鳥 (創元推理文庫)感想
言葉遣いや表現がやや古めの翻訳ですが、物語の時代に合ったものなっていると感じました。各話とも、数ページの作品ですが、そのなかで背景や登場人物の状況・感情を説明しながらストーリを語る良くできた物語です。人生や生活に疲れた人のお話が多く、暗い印象が残りましたが、ストーリーやテーマがまったく古くなっていない、普遍的で洞察を感じる短編集でした。
読了日:5月19日 著者:モーリスルヴェル
魔界探偵冥王星O―ペインのP (メディアワークス文庫)魔界探偵冥王星O―ペインのP (メディアワークス文庫)感想
冥王星Oシリーズ」の世界設定を舞台に、「彼ら」の気まぐれで、痛覚と視覚を奪われた妹、妹の痛覚を移植され常人以上の痛覚を持つ姉、そんな姉妹が「彼ら」関連の事件を調査していく物語。スピンオフといった趣のライトノベルです。主人公の意外な正体や物語の構成など、工夫を凝らした作りになっています。
読了日:5月25日 著者:越前魔太郎
魔界探偵冥王星O―トイボックスのT (メディアワークス文庫)魔界探偵冥王星O―トイボックスのT (メディアワークス文庫)感想
冥王星Oシリーズ」の世界設定を活用して、特異な状況を設定して、そのなかで、心理的な傾向を把握し、相手をこちらの意のままに行動するように誘導する、そういう駆け引きを描写しています。少しずつ明らかにされていく真相、最後の結末まで緊張感があります。そういう物語を、軽薄ともとれる一人称と会話で描く、意外な物語です。
読了日:5月25日 著者:越前魔太郎
魔界探偵冥王星O―ウォーキングのW (電撃文庫)魔界探偵冥王星O―ウォーキングのW (電撃文庫)感想
小学生の頃、夜の外出はドキドキするものです。それを親には内緒でクラスメイトと、しかも、ニュースで観た隕石を探しに行くというシチュエーションが素敵です。そんな小学生の冒険をライトノベルとしてまとめた上で、さらにそのシチュエーションに「冥王星O」の設定を絡ませて、「冥王星Oが冥王星Oになる物語」として仕立て、シリーズの外伝として上手にまとめています。
読了日:5月25日 著者:越前魔太郎
シークレット・レース (小学館文庫)シークレット・レース (小学館文庫)感想
元自転車選手の自伝的なプロ自転車競技の真実の物語、というか、ドーピングに関する告白。ランス・アームストロングツール・ド・フランスで7連覇を達成して、2012年にそのタイトルを剥奪された事に関する分かりやすい説明になっています。世界のトップレベルの競争の厳しさ、ドーピングなしでは勝負にならない現実とプロ選手としての立場・心理が書かれています。「ドーパーだけど最低じゃない」と言われても、2003年の16ステージなどの著者の活躍への感動が裏切られた気分です。真実は厳しいですね。
読了日:6月2日 著者:タイラーハミルトン,ダニエルコイル
崑央(クン・ヤン)の女王 (角川ホラー文庫)崑央(クン・ヤン)の女王 (角川ホラー文庫)感想
中国で発見されたBC1400年の美少女のミイラの調査を中国と日本の民間企業が共同で行い、その研究に協力するために、研究施設の高層ビルで臨時勤務する美人研究者がヒロインのホラー小説です。クトゥルーの旧支配者の説明を中国の伝説として上手く利用し、生物工学で旧支配者を復活させ、五行思想で封印するなどの工夫や、生物工学で生み出されたクリーチャーを相手にした、閉鎖されたハイテク施設での逃走と戦闘が楽しめます。1993年、20年前の作品ですが、当時の時代背景が前提の部分もありますが、現在でも充分に通用すると思います。
読了日:6月9日 著者:朝松健
世界の果てまで何マイル (ハヤカワ文庫SF)世界の果てまで何マイル (ハヤカワ文庫SF)感想
世界の果の街で2人だけで暮らしていた魔法使いの一人が、アメリカ南部で農業と車の修理を魔法を使いながらこなしつつ、平凡に暮らしていたところ、もう一人が追ってきて...世界を破滅させるアイテムとそれを防ぐアイテム、時の始まりと終わりの場所など、ファンタジーな設定を背景に、アメリカ南部から北の世界の果てに向かってドライブしていく旅の物語。アメリカのハイウェイの旅情、60〜70年代の自動車など、携帯もカーナビもない時代の雰囲気と次第に現実が改変されていく幻想的な景色などがゆったりと楽しめます。
読了日:6月9日 著者:テリービッスン
ラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランスラフ・ライド―アベレージレーサーのツール・ド・フランス感想
アイルランドの元自転車プロ選手の自伝です。生い立ちからアマチュアのトップへ、そしてプロデビューから引退とその後、ツール・ド・フランスやジロ・ディ・イターリアの各ステージの厳しいレースの状況、契約を維持するための努力など、プロの自転車選手の厳しい現実を体験できるような内容です。その「現実」はドーピングの実情を語り、この本の位置づけはプロ自転車界のドーピング告白のようになっていますが、それよりも、1970から80年代の自転車選手の夢と現実、挫折など、人生の物語として価値があると思います。
読了日:6月9日 著者:ポール・キメイジ
D―昏い夜想曲(ノクターン) (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)D―昏い夜想曲(ノクターン) (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)感想
表題作を含め、3つの短編が収録されています。どの作品も、シリーズの世界観を利用して、細かい説明なしで物語を進めているので、紙幅の割には充実した内容です。各作品のアイデアも独特なものですし、キャラクターもしっかり書かれています。特に、表題作は貴族の特性やDの台詞の多さなど、やや異色でありながら、違和感がない不思議な作品になっていると思います。
読了日:6月15日 著者:菊地秀行
D‐薔薇姫 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)D‐薔薇姫 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)感想
「洗練された奴隷制は隷属を喜ばす」という感じに支配された村で、奴隷からの解放を望みながら、最後には、その支配者になりたいと願う人間のヒロインの悲劇を、圧倒的な支配権を持つ女貴族とその騎士、貴族と騎士に挑む孤高のハンターという、シンプルな物語としてまとめています。主人公の刀を鍛つ鍛冶屋が格好良くみえるくらい、シンプルで定番な吸血鬼討伐です。
読了日:6月15日 著者:菊地秀行
BLOOD-C (角川ホラー文庫)BLOOD-C (角川ホラー文庫)感想
山間の町の女子高生は、実は化け物と戦う巫女だったというライトノベルな日常が、同級生の犠牲、化け物の謎解き、ヒロインの記憶の回復によって真実が明らかになる、ホラー・スリラーな展開を経て、黒幕との対決に向かうアクション物を気軽に楽しめます。オリジナルな「BLOOD」シリーズの設定に、「xxxHOLiC」の設定が絡むので、ちょっと解りづらいところもありますが、後編に期待できる内容です。
読了日:6月15日 著者:藤咲淳一,ProductionI.G/CLAMP
BLOOD‐CThe Last Dark (角川ホラー文庫)BLOOD‐CThe Last Dark (角川ホラー文庫)感想
前巻の続きで、近未来の東京が舞台になります。管理社会へのレジスタンスとの共闘、レジズタンスの仲間との気まずい状況、それを乗り越えて共闘する等、本巻だけで、「BLOOD」シリーズの作品として楽しめます。古めの「BLOOD」作品と比べると時代の変化を利用して2000年代版にまとめて、そんな感じです。「xxxHOLiC」な設定が不自然に感じますが、まぁ、許容範囲でしょうか...
読了日:6月15日 著者:藤咲淳一
D―蒼白き堕天使〈1〉 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)D―蒼白き堕天使〈1〉 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)感想
バンパイアハンターがバンパイアを護衛しながら旅をする、特異な状況のなか、刺客との戦闘がメインになっています。途中でさらにもう一人の女性バンパイア、都へ旅する双子の姉弟が加わり、物語が膨らんでいきます。前半のあっけない戦闘の理由は作者のあとがきで説明されていますが、それ以外は、このシリーズの作品として「悪くない」内容です。
読了日:6月16日 著者:菊地秀行
D‐蒼白き堕天使〈2〉―吸血鬼ハンター〈9〉 (ソノラマ文庫 710)D‐蒼白き堕天使〈2〉―吸血鬼ハンター〈9〉 (ソノラマ文庫 710)感想
吸血鬼を護衛する奇妙な旅の続き... 内部が刳り貫かれた1000mの巨木、巨大な空港と管理用AI、壮大な渓谷など、道中の舞台と刺客の能力を楽しめます。仕掛けを退けながら「神祖」を意識させて、このシリーズ全体の伏線を期待させてくれます。同行する吸血姫に取り付いた謎の「破壊者」、攫われた双子の弟など、不安材料が増えて緊張感もあり飽きさせない内容です。
読了日:6月16日 著者:菊地秀行
D‐蒼白き堕天使〈3〉 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)D‐蒼白き堕天使〈3〉 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンターシリーズ)感想
吸血鬼を護衛する旅が終わります。到着前後の経緯で、目的地、吸血鬼の城がある町で、改めて城の吸血鬼と戦うことになり、物語は仕切り直しです。吸血鬼の城へ赴くハンターという王道とも言える本来のシチュエーションに、ここまでの「しがらみ」が伏線となって物語を盛り上げていきます。
読了日:6月16日 著者:菊地秀行
D‐蒼白き堕天使〈4〉―吸血鬼ハンター〈9〉 (ソノラマ文庫)D‐蒼白き堕天使〈4〉―吸血鬼ハンター〈9〉 (ソノラマ文庫)感想
登場人物が多いので、伏線の回収、つまり敵方との戦闘と決着は「魔界都市ブルース」風の感傷的な感じがします。絶望的な状況を乗り越えて、妻または母に対する因縁の父と子の戦いは、それぞれが一段階パワーアップするというテコ入れもあって、最後まで物語を楽しめました。本シリーズではお約束な結末ですが、全4巻、飽きさせず、上手くまとめています。
読了日:6月23日 著者:菊地秀行
D‐双影の騎士〈1〉―吸血鬼ハンター〈10〉 (ソノラマ文庫)D‐双影の騎士〈1〉―吸血鬼ハンター〈10〉 (ソノラマ文庫)感想
前半の緊張感あふれる事件の描写から、魅力的なヒロインの登場、謎の設定等、いわゆる「セットアップ」の後、D自身のドッペルゲンガー的な存在が物語の根本的な設定である「神祖」とDの生い立ちを明らかにするのかも、という雰囲気で盛り上がっていくーのですが、なんとなく冗長な感じなうちに次巻に続くという終わりかたが残念です。
読了日:6月23日 著者:菊地秀行
D-双影の騎士 (2) (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンター (818))D-双影の騎士 (2) (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンター (818))感想
前巻の「セットアップ」から、決着の場所へ移動する道中と最終決戦というシンプルな構成ですが、「神祖」とDの生い立ちの謎が明らかになるかも、という前巻からの伏線のため、期待が高まる描写になっています。戦闘や貴族の施設の途方なさ等が楽しめますが、伏線等で煽られただけ、決着は物語としてもちょっと残念な感じです。とはいえ、これでまた次巻以降も変わらずに吸血鬼ハンターシリーズが楽しめると思えば、ホッとしますが...
読了日:6月23日 著者:菊地秀行
D‐ダーク・ロード(1)―吸血鬼ハンター〈11〉 (ソノラマ文庫)D‐ダーク・ロード(1)―吸血鬼ハンター〈11〉 (ソノラマ文庫)感想
吸血鬼の犠牲者の村のただ一人の生き残りと旅をすることになり、その後、物資の運送をする輸送隊と成り行きで同行したりと、今回は旅路が続きます。途中、かつて滅ぼされた大吸血鬼が復活したり、復活した吸血鬼のもとへ、同じく復活した吸血鬼が集まって、冒頭の虐殺に加えて、伏線で盛り上がります。
読了日:6月30日 著者:菊地秀行
D‐ダーク・ロード(2)―吸血鬼ハンター〈11〉 (ソノラマ文庫)D‐ダーク・ロード(2)―吸血鬼ハンター〈11〉 (ソノラマ文庫)感想
前巻の成り行きから、やっと吸血鬼と戦うーハンターとしての依頼を受けて、積極的な戦闘に移ります。今回は、吸血鬼の増援があり、相手の能力が見所の一つですし、可憐な少女吸血鬼の登場で華やかさや、吸血鬼の心理的な異常さなどの趣向も楽しめます。特に、輸送隊の心得といいますか、プロフェッショナルなプライドが格好良いです。
読了日:6月30日 著者:菊地秀行
D‐ダーク・ロード〈3〉―吸血鬼ハンター(11) (ソノラマ文庫)D‐ダーク・ロード〈3〉―吸血鬼ハンター(11) (ソノラマ文庫)感想
第2巻の盛り上がりで忘れかけていた第1巻冒頭の伏線回収がありますが、なんとなく、物足りない感じです。バンパイアハンターシリーズでも意外な結末というか結果で物語が終わり、新たな旅に、という徹底したロードノベルに仕上がっています。辺境の村の過酷さと群衆心理と言うか人間の低俗さと対比される輸送隊のメンバーが、本巻でも格好良いです。
読了日:6月30日 著者:菊地秀行
クトゥルー〈2〉 (暗黒神話大系シリーズ)クトゥルー〈2〉 (暗黒神話大系シリーズ)感想
五芒星形の石の護符、黄金の蜂蜜酒と石笛で旧支配者の眷属と戦うシュリュズベリ博士に関わる連作短編で構成されています。旧神や旧支配者、本神話体系の魔道書など、ガジェットや設定がありますが、なんといいますか、趣向はクトゥルー、という気分でしかなく、それはそれで悪くないので、ライトノベルとして、気楽に楽しむなら悪くないと思います。巻末にクトゥルー神話に登場する魔道書の簡潔な説明「クトゥルー神話の魔道書」というおまけが収録されています。
読了日:6月30日 著者:オーガストダーレス
D‐邪王星団1―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)D‐邪王星団1―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)感想
前作のラストで生き残った貴族ー吸血鬼が再登場し、あっさりと滅ぼされ、今回はもっと強敵だと緊張感を高めながら、今回も吸血鬼とともに旅をすることになります。5千年前の近いのために労を厭わないあたりが「貴族」と呼ばれるゆえんなのかも。辺境の農家の家族の絆が前半、後半は兄妹を護衛する旅路でDを楽しめます。
読了日:7月7日 著者:菊地秀行
D‐邪王星団2―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)D‐邪王星団2―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)感想
刺客から護衛しながらの道中続きます。狂気に憑かれた村の武器番や「時だましの香」を作る職人など、旅の途中で出会う風景や人物との関わりが舞台やガジェットになるので、次第に道度が濃くなっていくような感じがします。強力な吸血鬼から護衛するため、砦に入ったものの、妹への恋慕から精神を病んでいく兄の行動が、吸血鬼の復讐からの護衛を面倒な事態に変化させ、物語を発展させていきます。
読了日:7月7日 著者:菊地秀行
D‐邪王星団(3)―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)D‐邪王星団(3)―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)感想
護衛対象の兄妹を追って、敵の城へ向かう道中の戦闘が続きます。今回も道中の風景などが演出に使われるので、小さな戦闘などの密度が高く、旅と戦闘、辺境のガジェットやDの活躍を楽しむようになっています。追放された貴族の復讐が少しずつ打倒ハンターDになって、物語が膨らんでいきます。
読了日:7月7日 著者:菊地秀行
D‐邪王星団4―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)D‐邪王星団4―吸血鬼ハンター〈12〉 (ソノラマ文庫)感想
相手のもとへ、攻撃を退けつつ向かっていく前半は、前巻とどうように密度が高く、その勢いで後半の吸血鬼との戦闘へーそこに、さらに強力な伏兵やアカシックレコードなどの大掛かりな仕掛けが登場して、クライマックスが盛り上がります。5千年前の誓いどおりに、兄妹を護る「貴族」の活躍と最後がなぜか清々しいというか、あっけなく、その一方でホッとする終わりかたです。
読了日:7月7日 著者:菊地秀行
D‐邪神砦―吸血鬼ハンター〈13〉 (ソノラマ文庫)D‐邪神砦―吸血鬼ハンター〈13〉 (ソノラマ文庫)感想
危険地帯に墜落した飛行機の乗客が力を合わせて脱出するーそんなシチュエーションに、最強の吸血鬼ハンターが護衛に雇われます。ただし、護衛は先きに用を済ませてから、という条件付で、このため、一行はより危険な状況に陥ります。もともと不穏な「サクリ」がメンバーに含まれている上に、「用事」のために立ち寄った砦の強大な敵、その敵を倒すために送り込まれた刺客などと戦いながら、冒頭の脱出、生存というシチュエーションの人間模様も楽しめます。
読了日:7月7日 著者:菊地秀行
D-妖兵街道 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンター (994))D-妖兵街道 (ソノラマ文庫―吸血鬼ハンター (994))感想
吸血鬼が残した傭兵のいわくがある街道を調査するという依頼に集まった戦闘士との競合や生存者の少女などがからみながら、蘇った吸血鬼との戦い、そして暴走したシステムにより蘇った傭兵団との戦闘など、緊張感を保ちつつ次々と物語りが展開していきます。元吸血鬼ハンターの戦闘士と孤児院の少年のエピソードがちょっと格好良い演出になっているバンパイアハンターDシリーズの佳作だと思います。
読了日:7月13日 著者:菊地秀行
BLOOD‐C (角川ホラー文庫)BLOOD‐C (角川ホラー文庫)感想
山間の町の女子高生は、実は化け物と戦う巫女だったというライトノベルな日常が、同級生の犠牲、化け物の謎解き、ヒロインの記憶の回復によって真実が明らかになる、ホラー・スリラーな展開を経て、黒幕との対決に向かうアクション物を気軽に楽しめます。オリジナルな「BLOOD」シリーズの設定に、「xxxHOLiC」の設定が絡むので、ちょっと解りづらいところもありますが、後編に期待できる内容です。
読了日:7月14日 著者:藤咲淳一
D-魔戦抄―吸血鬼ハンター〈15〉 (ソノラマ文庫)D-魔戦抄―吸血鬼ハンター〈15〉 (ソノラマ文庫)感想
村に迫ってくる盗賊団と治安官・傭われた戦闘士の迎撃戦というシチュエーションに、盗賊団は吸血鬼に咬まれた犠牲者の吸血鬼的な能力があって、一方、村の護衛には吸血鬼ハンターその他の凄腕を登場させ、その上で、吸血鬼の凶暴さ、パワーなどが描かれていて、これに剣、弓や銃などの超絶の技で挑むという、いつもの吸血鬼ハンターシリーズの戦闘シーンを楽しむことができます。盗賊団の手先が村人として潜り込んでいるとか、吸血された村人が入り込むなどさまざまな仕掛けも楽しめます。
読了日:7月14日 著者:菊地秀行
D‐血闘譜―吸血鬼ハンター〈16〉 (ソノラマ文庫)D‐血闘譜―吸血鬼ハンター〈16〉 (ソノラマ文庫)感想
昼歩く吸血鬼、ただし、吸血鬼のパワーその他が劣化した、呆れた言動をする太ったオッサン。この吸血鬼が陽光の下を歩けるようになった研究がDの生誕の経緯と関係しているらしい−という大きな謎と、その研究のために犠牲にされた人間の子孫の恨みと憎しみがテーマのエピソード。昼歩く吸血鬼の振る舞いがユーモラスで明るさを感じさせる一方、辺境で生きる人間のたくましさ、思いやり、5000年にわたる怨嗟の醜さなどが対比されています。吸血鬼に対する結末もシリーズ中では意外な結果になっていて、今後が気になります。
読了日:7月14日 著者:菊地秀行
キョウカンカク (講談社ノベルス)キョウカンカク (講談社ノベルス)感想
幼馴染の恋人が連続殺人の犠牲者に...ヒロインは、警察の捜査に協力している探偵で「共感覚」を捜査に活用するというミステリ。描写はヒロイン視点ではなく、「共感覚」で得た情報が全て読者には明かされない描写で物語が進むのでミステリとしての楽しみがあります。「法で裁けない悪を私的に裁くことの是非」、「親しい人を殺されたら復讐は妥当か」などを考えさせられる作品でした。
読了日:7月21日 著者:天祢涼
闇ツキチルドレン (講談社ノベルス)闇ツキチルドレン (講談社ノベルス)感想
前作『キョウカンカク』の作中から、それほど時間と場所が変わらない地方都市での猟奇的事件を捜査する共感覚のヒロイン、ただし、もと警察庁高官が容疑者と関わりがあって...警察庁内部の権力闘争、本作の「助手」の女子高生と容疑者の祖父母と孫の関係が「共感覚」を小道具に上手くまとめられています。登場人物やヒロインの孤独が感じられる雰囲気のミステリです。
読了日:7月21日 著者: